アマゾンの恋

p74
ギリシャ人は、テルモドン河畔の戦闘で捕らえたアマゾンを三隻の船に乗せて引き上げた。
しかし捕まったアマゾン達は海上で男たちを皆殺しにしてしまった。
船を知らないアマゾンは舵を使うこともできず、漂流してしまった。
流れ着いたのはクムイノイ。自由なスキタイ人の領域である。
降り立ったアマゾン達は人家のある方へ向かい、馬の群れを見つけ略奪した。
そして騎馬でスキタイ人の持ち物を奪い始めた。


スキタイ人は初め、何が起こったのかわからなかった。言葉も服装も違う民族がどこからやってきたのだろうか。
アマゾン達を若い男たちだとおもったスキタイ人は、戦いを仕掛けてはじめてアマゾンが女性だと知った。
スキタイ人はアマゾンを殺さぬように協議し、一番年の若い男たちをアマゾンと同じ人数だけ彼女らに仕向けた。
アマゾンの近くで野営し、アマゾンと全く同じことをするようにした。アマゾンが追ってくると戦わずに逃げ、それが止まるとまた戻ってきて近くに野営する。
お互いに敵意がないことに気づくと、次第に双方の野営地は接近していった。

午後になるとアマゾン達は一人ないし二人でばらばらになってお互い遠く離れて排便する。
スキタイ人はこれを真似し、一人が独りになったアマゾンに近づいた。
女は拒まず男のするままにした。言葉は通じないが、ジェスチャーで意思疎通し、お互いの部族は野営地をあわせて一緒に住んだ。
男は女の言葉を理解できなかったが、女は男たちの言葉を覚えた。
男たちは女を誘って国へ帰ろうとしたが、女たちは習慣の違いからそれを拒み、財産の半分を受け取って土地をさる事を提案した。
そして彼らはタイナス河をわたり、マイオティス湖から北へ3日進んだ位置へ移り住んだ。

クレストナイオイの妻たち

p135
トロキア人のクレストナイオイ族の北方に住む男たちは、みんな多数の妻を持っている。
その男が誰か死ぬと、どの妻が一番愛されていたか、ということで妻同士の間で激しい競り合いが起こる。
また、死んだ男の友人たちもこのことに大変な肩の入れようをする。
選ばれた妻は男女問わず部族一同から賞賛され彼女の最も近い縁者の手によって夫の墓の上で喉を切り裂かれ夫とともに埋葬される。
残った女たちは我が身の不運を嘆く。

トラキア人のゲタイ族

p65
トラキア人の中で最も勇敢かつ正義心の強い部族であるゲタイ族
彼らが霊魂の不滅を信じる方法はこうだ。
彼らは自分たちが死滅するとは考えず、死亡したものは神霊サルモクシスの許へ行くと信じている。
五年目ごとにくじを引き、くじの当たった者に、その時々の願い事を言伝て、サルモクシスの許へ使者として送る。
その送り方だが、その役に当たっている者たちが三本の投槍を構えていると、別のもの達がサルモクシスの許へ送られる男の手と足を両側からとらえて振り、宙に放って槍の穂先めがけて投げる。
男が槍に突かれて死んだら、神が彼らに行為を持ったと考える。
その男が死ななければ、その使者が悪人であるといってその罪を問い、その上でまた別の人間を送る。願い事の伝達はその人間の生存中に行う。

残酷だね、スキタイ人

中巻p44
スキタイ人は、アレスに対しては獣の他に人間も犠牲を捧げる。
戦争で生け捕りにした捕虜のうちから100人に1人の割合で選ばれた犠牲者は
頭に酒をふりかけられてから、喉を切り裂かれ血を器に受けられる。
その器を山の上に持っていって短剣にかける。
山の上に持っていく一方で下方の聖所では以下のような儀式が行われる。
屠られた男たちの右肩をことごとく腕ごと切り離して空中に放り上げ、その他の犠牲の行事を済ませてから立ち去っていく。後には腕は落下したところに、動態は別の場所にそれぞれ横たわっている。


戦争では、最初に倒した敵の血を飲む。また、戦闘で殺した敵兵の首はすべて王の元へ持参する。さもなくば収穫物の分配にありつけない。
また、スキタイ人は首の皮を剥ぎ取る。まず耳のあたりで丸く刃物を入れ、首をつかんで揺すぶり、頭皮と頭蓋骨を離す。次に牛の頭蓋骨を用いて皮から肉をそぎ落とし、手でもんで柔軟にすると一種の手巾ができる。
それを自分の乗馬の馬勒にかける。この手巾を一番多く所有するものが最大の勇士とされる。
穿いだ皮を縫い合わせて上衣を作ったり、右腕の皮を爪ごと剥いで矢筒の被いを作る物も多い。
首そのものの扱いだが、最も憎い敵の首だけだが、まゆから下を鋸で切り落とし、残りを綺麗に掃除する。
貧しいものは外側に牛の生皮を張ってそのまま、金持ちは牛の生皮をかぶせて、内側に黄金を張って杯として用いる。
身内の間に争いが起こり、王の前で相手を負かした場合もその首を同じように扱う。大切な来客があると、この頭蓋骨を見せて、近親であった自分に争いを仕掛けたので打倒したのだと自慢する。

マゴス殺し祭り

P392
マゴス僧に支配されたペルシャを取り戻すために謀反を起こした7人の男たち。
城に突入し、討ち取ったあとマゴスの首を持って城を出て、ペルシャ人達に事の次第を話しながらマゴス僧をひとり残らず殺して歩いた。
それを聞いたペルシャ人達は、マゴス僧に騙されていたことを知り、自分たちも同じことをしていいだろうと、マゴス僧を殺して回った。
ペルシャの全国民はこの日をどの日よりも大切にしており、この日には盛大な祭りを祝う。(マゴポニア=マゴス殺し祭り)
この祭りの日は、いかなるマゴスも外に出ては行けない。

インド人の生態

P407
パダイオイ人。生肉を常食する遊牧民。同民族間で男女問わず病気にかかったものがいると、男の場合は彼ともっとも親しい男が、女の場合は彼女ともっとも親しい女が、
病やつれしては折角の肉がまずくなると称して彼らを殺す。当人は病気じゃないと言い張るが容赦なく殺して肉を喰う。
この種族では高齢に達したものは殺して食う習慣がある。もっともそこまで高齢に達することは殆どなく、そこにいたるまでに病にかかったものはひとり残らず殺されてしまう。


別種のインド人。生物を一切殺さず、農耕もせず、住居も構えない。草を常食し、その地方に野生するさや付きの穀物をさやごと煮て食べる。
この種族間では、病にかかったものは人気の無い場所へ行って横たわる。死のうと患っていようと構うものは誰もいない。


これらのインド人は皆畜生と同じように男女間の交わりを公然と行い、肌の色も同じでエチオピア人によく似ている。
彼らが女子の体内に射精する精液の色は膚の色と同じ黒色である。(アリストテレスはこれを否定している)

シナモンの取り方

P413
アラビア人はシナモンがどこに生えているのか知らない。
シナモンは巨大な鳥が運んでくるもので、人間の足の及ばない断崖に土で作った巣の仕上げにシナモンの枝を運ぶ。
そこでアラビア人は死んだ牛やロバやその他の荷引き用の獣の四肢をなるべく大きく切って巣の近くに置く。
鳥がそれを巣へ運んで行くが、巣は重さに耐えかねて地面に落ちてくる。アラビア人はそこに行って落ちてきたシナモンを拾う。